幻想俯瞰飛行

生存記録を兼ねて長文を書くためのブログ。文章読んだり書いたりします。 

ASIAN KUNG-FU GENERATION「ホームタウン」最(じゃないけどそれなりに)速雑感

買いました。聴きました。感想書きます。
楽器や音作りの話は全くわからないんでそういうのは雑誌とか読んでください。歌詞の話が多めです。オタクなので……

Disc.1 ホームタウン

1.クロックワーク

リヴァース・クオモブッチ・ウォーカーとの共作(というか、インタビュー読む限りリヴァースに頼んだらなんかいつの間にかブッチも協力してもらってた、みたいな感じなんですかね)。
街の雑踏の音からギターのアルペジオで静かに始まり、サビで一気に展開する。アジカンの一曲目にしてはスローに広がりを持たせる曲という感じ。最近のアジカンの曲は往々にしてそうなんですが、間奏・アウトロのギターがエモーショナルで非常に良い。この辺までくると確かにウィーザーっぽいなあと思うんだけど、アジカン色にもなっていると思う。
歌詞はタイトル通りシンプルな時計モチーフで一貫させているんだけど、アルバム通してのテーマ性(私はおそらく「歩みを緩めること」だと思ってます)の宣言にもなっていて良い。
アウトロ、エモいギターで終わるのではなく、ゴッチの述懐のような「忘れられないよね」で終わるのがアジカン~!という感じでいいですね……

2.ホームタウン

本アルバムのリードタイトルにして白眉。アジカン一番の持ち味ともいえる「サーフ ブンガク カマクラ」的なカラッとしたパワーポップ
やっぱりアジカンの強みはキャッチーなギターリフとシンプルなメロディだと思うので、ここ最近でも指折りの名曲と言えるのではないでしょうか。こういう曲にタイアップ持ってこれないんですかね……
ツイッターやインタビューでゴッチが口癖のように繰り返していた低音の話に「お、おう……」って感じになる自分のような耳の悪いリスナーでも、明らかにこれまでと違うように聴こえるスネアの「パァン!」という軽快さと重みを持ち合わせた音。確かに楽器と楽器の分離がいいというのか、ちゃんとくっきりそれぞれの楽器が何の音を鳴らしているのかはっきりわかる。低音をきっちり作ると上のギターがきっちり聴こえるってことなのかな。よくわからんけど。
歌詞はRCサクセション「雨あがりの夜空に」の本歌取りっぽいことをやりつつ、アジカンにしてはあっさりと言っていいほどストレートなメッセージソングに仕上がっている。サビの「俯いていては将来なんて見えない」は定型句に見えるけれども、冒頭の「ナッシング 実は何にもない」からの連に象徴される「喪失と獲得の両義性」というアジカンの一貫したテーマ(「ボーイズ&ガールズ」もこれで、恐らく意図的に繋げてますね)の文脈の上に乗せることによって、重さの全く違う言葉になっているのが面白い。でもこの歌詞のパンチラインはどう考えても「『こんなことして何のためになるんだ』 そんな問いで埋め尽くされてたまるかよ」でしょう。強い。
サボテンするときにわざわざ丁寧に靴を脱いでるMVが面白いことも含め好きです。

3. レインボーフラッグ

いい感じに泥臭いイントロから始まり、こういう感じの曲にアジカン節乗せていくのかな~と思い聴いていると「いつだって悲しくなって~」からガラッと曲調が変化してオッとなる。ここの歌い方、コーラスの重ね方がまた肩の力が入りすぎていなくて良い感じ。あとこの曲調でこの歌詞というのがアジカンらしくて良い。ラストは展開を戻しつつも余韻を残して終わる。
歌詞に関してはLGBTの象徴であるレインボーフラッグを題名に冠する通り、多様性を許容する自由を求める人々へのエールなのかと思うんだけど、もうちょっとレンジを広くとった歌詞のほうが個人的には好きだな、と思った(象徴として使っているだけで、LGBTの人々だけに向けた曲ではないと思うんですが、歌詞の広がりや読みの余地がもっとあったほうが好みだなという意味で)。万人に刺さる可能性があるテーマだけに。
あともうちょっとうまいこと言ってくれたほうが楽しいかなという個人的な欲望。やっぱりアジカンにおけるゴッチの比喩やワードチョイスが好きという面はでかいので。歌詞に「七色のアーチと自由なフラッグを掲げよう」とまで出しているので、自分ならタイトルはレインボーフラッグにしないかなぁ……。
リンドウの花言葉ネタを持ってくるの本当にオタクに刺さる

4.サーカス

ローファイな……と言うのかな? ゆるい感じのビートはGotchソロ色かなとも思うんだけど、特にサビのメロのくっきりした感じははっきりアジカン色という印象を受けた。曲として好きかと言われると微妙なところだけど、「愛なき日々のハーフタイムショウ」の部分がメロといい歌詞といい(この言い回しのセンス好き)すごく良い。
「滑舌の悪い~」のところ、前情報として雑誌で読んだときは「ウーーーン!!!」って感じで、実際に曲として通して聴いてみても「ウーーーーーーン!!!」って感じでした、正直に言うと……。
思想どうこうとか、風刺的な歌詞がイヤとかそういうわけではなく(はっきり言って積極的に好きにもなりませんが)、皮肉というのはピンポイントでクリティカルヒットさせないと意味がないしダサいと思ってるので、正直ここは「もっとダメージ入れる言い方があるのでは!?」と。別にダメージ入れようとして言ってないとは思うけど、だって滑舌の悪いのが問題だと思ってるわけじゃなくない……?それは表層的なdisすぎない……?もっと根本的な問題を抉り出すような物言いがゴッチなら出来るんじゃない……?いや知らんけど……私の意見じゃないので……。
ただ、音楽と人のインタビュー読む限り、これってゴッチ自身のことにもかかってるダブルミーニングっぽいんですよね(気付かなかった……「ゆーて君も滑舌悪ない!?」って普通に思ってた……まぁ意識するよねゴッチなら)。プロテストソングがやりたいわけじゃないみたいなことも(聴き手に考える余地を与えたかったのかな)。1980で「出鱈目 プライム・ミニスター」をdisりながら「猿真似 フェイク・ロックスター」と自虐もする、みたいなバランス感覚は好ましいし(この歌詞も別に好きじゃないけど)、そういう「俺自身はどうなんだ」みたいな問いを常に内包させる意識はずっとあって欲しいんだけど、それはそれとして滑舌の悪いって表現を使うのは個人的に好きじゃないかな、と思います。対象と自分を同時に刺す高度なテクニックとしてはぴったりの表現なんですけどね。そもそもそこを槍玉に挙げるのはポリティカリーインコレクトじゃないかなとも思うし、あとは仮想敵よりもその背後にある構造そのものを刺してほしいなというのもある。
アジカンにおける風刺の完成系は「それでは、また明日」だと思っていて、この曲は震災という背景を代入してもしなくてもちゃんとテーマがはっきり浮かび上がってくる読みの強度もあるし、何よりCメロの「緩慢な輪になって 単純なことになって 賛成か 反対か それは何やってるの?」のくだりに妥協が無いというか、いずれか一方に与して他方を叩きのめすのではない、陣営ゲームに甘んじない強さがあると思うんですよ。聴いた人全員、この社会に属する全員がハッと我が身を振り返って身を正すような、そういう一方的ではない風刺こそが理想と自分は勝手に思ってます。で、「それでは、また明日」がメチャクチャメチャクチャ好きすぎてハードルが上がってしまうんですよね……。だからアジカンの風刺系にはちょっと辛辣な感想を持ちがち。「惑星」とか「祝日」も実は歌詞がそこまで好きではない……。
基本的に後藤正文の歌詞についてはサイコー!!!300万点!!!みたいなスタンスなんですけど、こういうあたりのバランス感覚は課題かなと偉そうなことを思ってます。やっぱり「何度でもオールライトと歌え」で述べられていた二項対立の先の理想を信じたいので。
アフィブログとかに捕捉されたくないしギャーギャー騒ぎ立てられたくもないのでフワフワした言及で失礼しました……あの辺の輩は早々に滅びてくれ……。文句長すぎ

5.荒野を歩け

音楽文でいろいろ書いたので割愛。
「アジカンという呪い」を超えて – ASIAN KUNG-FU GENERATION『荒野を歩け』が拓いた地平 (柴山ヒロタカ) – 2017年5月・月間賞入賞 | 音楽文 powered by rockinon.com
アルバムの流れで聴くといい感じのゆるさがマッチしていていいですね。荒野が軸のアルバムって感じする。
音楽文では書かなかったけど、なんだかんだ言って「夜は短し~」を読み込んで作ったんだろうなってところが好きです。主題歌制作うま太郎か?

6.UCLA

スロウテンポな入り方に女声パートがあったりしつつもじわじわサビへ向けて熱を上げていき爆発するタイプの曲(今回結構これ系ですよね)。
「呼び声が君に届くように 出会うべき人と出会うように」でリズムパターンが変わって開放的にギターが鳴るの本当に気持ちいい! しかもここ、歌詞も最高なんですよ。現状を「君はまだ雨宿り」と置きながらも「君に届く」ときがくる、としているのは、前述の「歩みを緩めること」まさしくそのものだよね。Aメロの描写とか「わたしはわたしを抱きしめたいだけ」というパンチラインがここで生きるんだよな~!
テーマ的にも曲的にもなんとなくランドマーク期の好きな曲を思い出しました。バイシクルレース大洋航路あたりの……
Talking Rockで歌詞が「迷子犬と雨のビート」の引用だと触れられていて、読んでみると確かにな~と思った。迷子犬も「いつか君と出会おう」なんですよね。

7.モータープール

てっきりこれがリヴァース曲なのかと思うくらいにのっけからウィーザーリスペクトって感じだし、サビのギターフレーズとボーカル&コーラスの乗っかり方とか本当にめちゃくちゃ好きですね。パワーポップアジカン流に消化・昇華するとこうなるよ、という好例というか。ちょっと翳りのある歌詞だけど(好き)、言葉の乗っかり方もこのアルバムトップクラスに気持ちいい!
「鼻歌 歌った 好きな曲じゃないのに」とかサラッと出てくるところが本当にゴッチ作詞ぢからメチャクチャレベルアップしてるな~!と思う(言い方がえらそう)。
三分半程度でちょっと物足りないと思うくらいで終わるのも憎い。特異なことをしていなくても強いというかなんというか、そういうアジカンらしさという面でもこれをリードにしてもいいくらいに思うんだけど、なんでシングルならんのかな~あっゴッチが「ボーイズ&ガールズ」ゴリ押ししたからだ……(察し)。

8.ダンシングガール

こっちが二つ目のリヴァース曲。不穏なイントロ~Aメロからポップなサビに開けると「なるほど……ウィーザー……」となりますね。でもこれも結構アジカンナイズされているよな……と思うと謎のハードな間奏が始まってンンッwwwとなる(ゴッチが「笑っちゃうやつ」って言いそうなやつ……)。でもこの間奏から「あの娘が笑ったんだ」でラスサビの流れがすごくかっこいいんですよー!!!サビのコーラスも好き!
これも音から歌詞起こしてると思うんですけど、言葉の流れが気持ちいい歌詞ですね。「闇も夢も連れ出して」は後藤節だな~!好き!
「辿れば疲れる言葉たちを~」のところが「歩みを緩める」テーマかな、と思う。

9.さようならソルジャー

これめちゃくちゃいい……イントロAメロBメロサビで結構曲調がコロコロ変わりつつもサビでちゃんと回収して着地してくれる感が頼もしい……。
歌詞の中にオールライトを据えるだけあってここまでの流れとか結構盛り込まれてるのかなーなどと思いました。歌詞に「時計塔」が出てきて「クロックワーク」に戻る感じもそれっぽい。「南の島へと辿り着くまで」の後からオリエンタルというかアジアンというかな曲調になるやつは笑うが……。
これ、タイトルからして「ああ、そういう歌なのかな」とも思うし、Talking Rockかなんかのインタビューで南北朝鮮のイメージって語られてたので思いっきりそういう文脈を意図して書かれたとは思うんですけど(「境界線の向こう」だしね)、私は勝手に(広義の)ラブソングと解釈してるし、もっと言うなら「アジカンと我々=リスナー」のラブソングとして超勝手に受け取ってしまっています。「これからは君が会いに来て」「僕たちはまだオールライト」「遂に君と出会った もう 離れないでよ」なんだよな~~~!
いやもう完全なる勘違い読解なんですけど、ゴッチもその辺は受け手の自由だと思ってくれるだろう……。意図通りの意味でも(広義の)ラブソングだとは思うし、好きなのですが。

10.ボーイズ&ガールズ

歌詞、優勝!!!!!!!!100億点!!!!!!!!!!!
「生者のマーチ」からの流れであり、源流を辿れば「マジックディスク」各曲、いやもっと遡って「タイトロープ」にも行けるしいっそ「遥か彼方」でもある(あとソロだけど「Can't Be Forever Young」も)アジカンというバンド、そして後藤正文という詩人の根源的テーマである「喪失と獲得の両義性」の最も優れた形での表出ではないかと思います。このテーマとアジカンについてはそれだけで記事一個分語れるしいつか語りたいところなんですけど、その辺の流れが全て「はじまったばかり We've got nothing」にすべて集約されているの、満を持してという感じですね!
冒頭の連からもう本当に歌詞が完璧すぎて歌詞が完璧しか言うことがないな……。
「ホームタウン」で「ナッシング 実は何にもない それに先立って夢も希望もない」で、「ボーイズ&ガールズ」で「教えてよ そっと 夢と希望 まだはじまったばかり We've got nothing」に着地するの本当に完璧すぎるんですよね。何もないからこそここから始まる。このナラティブの読み変えというか、ドミナント・ストーリーからオルタナティブ・ストーリーへの転換というか、その辺はソロの「Lost」でちょっと触れられてる部分なんですけど、それをアジカンとしての形でアップデートしてきたのがこのアルバムでの流れなのかなと思います。さらに「ここからが始まり」っていうニュアンスが強くなってますね。
曲構成は特殊だしテンポのいい曲ではないけど特徴的なフレーズの繰り返しがあるので、訴求力自体は強い曲なんじゃないかなぁ。主題歌っぽい。何らかの主題歌にして欲しかった……。
総じてリードギターのエモいアルバムがリードギターがエモく終わるところもいいですね。ラストナンバーらしいラストナンバーに落ち着いた曲。

Disc2. Can't Sleep EP

1.スリープ

フィーダーのグラント・ニコラスとの共作。昨年のスプリットツアーで曲自体は聴いていて、「おお……めちゃくちゃフィーダーだな……」と頭の悪い感想を抱いた記憶があるのですが、Aメロ・Bメロのコード進行やメロディの上下は確かにフィーダーっぽい(クソにわかの偏見)し、サビもアジカンっぽくはないなとは思うんだけど、なんかアジカンなんですよね……Cメロがそれっぽいからかな……でもCメロもアジカンらしさではない気はするんだよな……曲構成に自信ニキの解説を求む。
コーラスの重ね方もアジカンっぽいようなUKっぽいようなという感じに思える。
これもとにかく歌詞がムチャクチャいいんですけど、こういうおっさんバンドがAメロのこういう歌詞歌ってんのそれだけで感極まるな、「破れたシャツ ズタズタのプライド 引きずって もう」「干からびてカラカラの才能 携えて もう」とか本当にヤバいですよ。
それで「『繋がっていたいよ』古びた破片が光った」でしょ……。これは「未来の破片」のセルフパロディなんですけど、「繋がっていたいよ」って初期アジカンの根本のテーマのひとつで、それがパブリックイメージと強く結びつきすぎたり、テーマとしてもそこが強くなりすぎて自家撞着になったりしていたところがあって(「君」と「僕」の結びつきだけを見られてセカイ系と誤解されたように)(でもどうやったらアジカンの歌詞からセカイ系を感じ取れるのか未だによくわかんないな)、それゆえに「マジックディスク」の「イエス」ではそこがぶった切られたんですよね。

「『繋いで』それだけを頼りに意気込んだ彼らの 屍 掻き集めるなら新しい何かを」
「『繋いで』いるような素振りに掴まって浮かんでも 死ぬまで細胞は個の壁を乗り越えないだろう」

バンドのキャリアとしても時代としても、「繋いでいたいよ」と無邪気に歌っていられる時期はとっくに逸していただろうし、言語表現やってる人間はどこかしらでディスコミュニケーションという課題にブチ当たるものだと思うので、作家としては至極当然な帰結だと思います。それにしても自分たちが過去歌っていた希望を真っ向から斬り捨てるこのフレーズは衝撃的だし、もう完全にアジカンという存在を殺しにかかっていて、その勢いはメチャクチャ好きだけどそれはそれとして悲しいよなぁ、みたいな思いはあって。「マジックディスク」って全体的に「このご時世になってロックが自意識にばっかかかずらってる場合じゃねぇ!」みたいな勢いがあるじゃないですか、その勢いは強いし正しいけど同時にものすごく自滅的だなとも思ってしまうんですよ。事実、相関性があるかはともかく、この後のツアーでアレがアレしてアア~ッてなって震災前は解散寸前だったわけだし……。
そういう「マジックディスク」への「めっちゃ好きだけどめっちゃつらい」みたいな思いが、「スリープ」のここでちょっと成仏したんですよね……。
「未来の破片」の「繋いでいたいよ」は時を経て「イエス」で棄却されて、その先を模索してたけど(「Easter」は「イエス」で殺したアジカンを「復活」させる曲説もあったね)、ここにきてそれでもその時の想いは「古びた破片」だけど「光っ」ているものなんだな、って……。無駄ではなかったんだな、って……。過去の自分への赦しでもある。
「新時代の胎動 古びた破片が光った 繋がっていたいよ」で終わるんですよこの曲は。「繋がっていたい」というテーゼは古びてはいるけど、輝きを失ってはいないし、新たな時代をゆくアジカンの中にもちゃんと存在しているものなんですよ。あ~~~エモ~~~~~い。。。
あとCメロももしかして引用なのかな。「何もできずに毛布をかぶったり」は「桜草」、「燃え尽きるまで」は「ロケットNo.4」、「弱く光ったり」は「路地裏のうさぎ」を思い出したんですけど、深読みしすぎですかね……。
曲300点歌詞5万点偏差値3億みたいな曲(インフレ)。

2.廃墟の記憶

ストレイテナーホリエアツシ曲。JAPANインタで「ホリエの曲だけはどう聴いてもホリエだわ」みたいに言われてたの笑ったけどまあホリエ節でしたよね……
メロディの記名性も強いし、リズム的にもアジカンによくある感じではないし、何よりホリエも歌ってるしな……
「照準を背中に~」のところとかもアジカンらしくなくて新鮮で楽しい。
てっきり歌詞も共作なのかなと思ってたんですけど、なんとゴッチがホリエっぽい言葉遣いを意識して全部書いてるっぽくてヒエ~ッ文体模写うま太郎~!?と思いました。ワードチョイスもだし、「書類の改竄に~」「手向けられた~」のとこの皮肉っぽさもいい感じにホリエ節とゴッチ節が混じってて好きです。
テナーファン的には「君は残って ここに残って後を担うのか」「長いばかりで中身のない話をしながら」あたりでニヤッとなるのもいいですね。私はファンだけどすごい聴きこんでいるわけではないので、テナーガチ勢の人が探せばもっと元ネタ沢山ありそうな気がします。誰かよろしく!!!

3.イエロー

全山ちゃんファンが死んだやつ(ライブ楽しみですね……)。
山ちゃんって実はゴッチよりも「世間で言うアジカンらしいアジカン」的なフレーズ・曲構成を作るのが巧いんじゃなかろうかと思っているんですけど、これのイントロとかもあ~めっちゃみんな好きそうなやつ~!ってなる感じが山ちゃんだな~と思いました。ただ自分としては「アジカンらしさを度外視して120点のいい曲を作れる」のがゴッチ、「アジカンらしさを巧く具現化しつつ平均点は超えてきてくれる」のが山ちゃん、というイメージがあって、「イエロー」もそういう感じ。そういう意味でこの二人の共作が一番のヒットへの道だと勝手に思ってるんですけどどうなんすかね……。
シリアスなイントロからヴォコーダー通した無機質なボーカル(山ちゃんです)が不穏なAメロ、サビはポップに開けるけど二回目の「誰も知らないまま」でコード進行変わる?っぽいとことかは山ちゃん節かな~と思った。なんかそういういい感じのテクニック使ってくるのはアジカンきっての理論派の山ちゃんかなと思っているので……(偏見)
歌詞は完全に皮肉とか風刺に振ってる感じ。テーマは割と明確で、悪くないけど好きでも嫌いでもないかな……。「闇雲な愛から浮き上がった悪夢」「君らしさの果て」とかの要所要所のワードチョイスは好きなんですよね。イエローは肌の色のことなのかな。

4.はじまりの季節

THE CHARM PARK兄貴、bioに「ゴッチさんじゃないです」って書いてるのムチャクチャ笑うんだよな
インタビュー等でゴッチも似たようなこと言ってるけど、理屈で「アジカンらしさ」を詰めて曲にしてて、これ嫌いなアジカンファンいねえだろうなって感じになってて本当にすごい。バークリー卒の圧倒的”パワー”。明るい曲だけど翳りがあるとことか本当にそれっぽい~! アウトロもWonder Future期の大団円アウトロって感じがして美しい。
題は「終わりの季節」からなんだっけ……その辺履修不足なので識者の感想を待ちますが……。
この後の「生者のマーチ」に続くような「生と身体」みたいなテーマ性を孕みつつ(どちらも「輪郭」という言葉使ってますね)、「もう余命だって何十年とはないから」という今のゴッチにしか書けないよなーという部分もあり。死と終わりを見据えた上での生、失うことがあるからこその得るもの、まさしく「喪失と獲得の両義性」に繋がるテーマ性はすごくいいし、ていうかこのテーマでアルバム一枚作ってくれよって「生者のマーチ」からずっと思ってたんですけどもうワンチャンないんですかね……。今の年齢ならめちゃくちゃいいもの出来ると思うんだけどな。

5.生者のマーチ

発売当初に「神!?!?!?!?!?!??!?!?!」みたいなこと喚きすぎて、あまりにも好きすぎて、マジでこの路線のアルバムが欲しかったみたいな思いを未だに喚起してしまうレベルに好きだし、好きすぎて何回も聴けない(泣くので)。
的確に使うべき個所にだけ比喩を配置して、限界まで言葉を削ぎ落とし、サビではいい意味でアジカンらしくないドストレートな言葉を乗せ、アウトロでは詞より饒舌なギターに語らせる、もう何もかもが最高。これは本当に今のアジカンにしか作れない曲(そして今の建さんにしか演奏できないギター!!!)。
喪失を前提に置くからこそ尊く愛おしく立ちのぼるわれわれの生を、ここまでみずみずしく描いた歌詞があったでしょうか。
このテーマはここが最高峰だと思ったけど、この後に「ボーイズ&ガールズ」が出てきたので本当にゴッチは無敵だなと思いました。

総評

めっちゃ良かった。減点20加点2189461294812794128478197みたいな感じだった。
単なる「サーフブンガクカマクラ的パワーポップ回帰」で語られたらもったいないと思う。自分のよくわからないサウンドメイキング的な進化を除いても、(特にギターが)やっぱ今のアジカンですよね、という感じなので。サーフブンガクは二枚いらないし、ホームタウンはサーフブンガクの二枚目ではないし、サーフブンガク完全版の話がどうなったのかそろそろ教えて欲しい。
ホームタウンのほうは「歩みを緩めること」がテーマなのでは、と書いてきたので、それに関してちょっと付け加え。メディアを通じた情報の速度がとにかく速くなり、身近な人間関係から世界での出来事全部ノータイムで懐に入ってそのまま出ていくようなファストな世の中で、別にそこについていかなくてもいいんじゃないか、自分の速さで歩いていても割と大丈夫だよ、と言ってくれる感じのアルバムなのではないかと思う。それはかつて自分たちも時流に乗って周りに負けじとガツガツ戦ってたアジカンが歳を重ねて自分たちを肯定できるようになってきたからこそのテーマでもあるし、世代問わず響くテーマになりえるんじゃないかな。
アジカンのそういうリアルタイムで感じたことをテーマにしてくれるのに軸はブレてないところ、本当に愛せますね。好きです。
サーカスのことも愛せよ