幻想俯瞰飛行

生存記録を兼ねて長文を書くためのブログ。文章読んだり書いたりします。 

【再掲】ゼロ~10年代邦ロックファン(特にアジカン)とオタクとぼっちは「ぼっち・ざ・ろっく!」を読め ――ロックと孤独とつながること

 アニメ「ぼっち・ざ・ろっく」、最高最高最高~~~!!!!!!

 ということで、原作一巻前に某所にアップし、大変ありがたいことに好評と読んだよ報告を複数いただいた布教文章を再掲したいと思います。
 現在は巻数も出て、バンドマンからの言及も多く(アジカンからも!)、これを書いたころからはずいぶん遠いところまで来たんだなあ! と感慨にふける意味もこめて特にその後の展開に合わせて情報の修正などはしていません(デッドリンクは削ってます)。
 ですが、きらら漫画イズムを踏襲しつつ令和のロックンロールバンド漫画としての特異点たりえそうなこの作品の魅力についてはここに書かれていたことと遜色なく続いているので、アニメから興味を持たれた方にもパッションが伝われば幸いでごさいます。

~名誉アジカンリスナー谷口鮪さんありがとうの気持ちを込めて~

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 初めまして。突然ですがめっちゃハマっている漫画の話をします。
 現在まんがタイムきららMAXで連載中、はまじあき先生の『ぼっち・ざ・ろっく!』という四コマ漫画です。単行本まだ出てないけど今から推すしかないんですよ。アンケ出そうな。


 とりあえずあらすじ引用しときます。

 動画投稿サイトで「ギターヒーロー」として人気を集める天才少女は、実は世間になじめない「ぼっち」少女だった。ひょんなことから加入した下北沢のバンド「結束バンド」で、少女は新しい世界へと足を踏み出していく。

 いやもうほんとその通りなんだけど、これだとこの漫画の魅力をまだ説明しきれていないんだよな。


☆「バンド×ぼっち」というテーマ設定の妙


 ビジネスの発想法として「アイデアとアイデアを掛け合わせる」のは常道ですが、この漫画もまた、ありそうでなかった「バンド×ぼっち」という掛け合わせのもとに作られたものです。
 バンドものの先行作の有名どころというと、正統派な作品では『BECK』や『ソラニン』、ギャグだと『デトロイト・メタル・シティ』、そして同じくまんがタイムきらら系列のゆるふわ日常軽音楽部もの『けいおん!』あたりでしょうか。『ぼっち・ざ・ろっく!』はそれらとはまた違ったアプローチの作品です。
 美少女主人公に読者=オタクの心情を代弁させる非リア/陰キャ/ぼっちもの、もまたありがちではあると思います。実際に、このマンガにも割と刺さるぼっちあるあるが散見され、そのブラックユーモアが面白さに一役買っていることは事実です。

「いつも話しかけて貰う前提だったから話の振り方がわからない…」(5話)

 わかる

「便所飯って明るい人が考えた陰キャのイメージだよね トイレでご飯なんて食べないし女子トイレなんて常に人がいるのに…」(5話)

 人気の少ない場所探すよね。高校の女子トイレは休み時間の度に人が集まるのもわかる。

 あと一話のバンドグッズ持ってって話しかけられるの待つのわかるすぎる……私も高校時代は文化祭にナノムゲンフェスのタオル持ってったものよ……アジカンの缶バッジやキーホルダーつけまくってた……学年にアジカンファンほぼいなかったので意味なかったけど……

 いや私の思い出話はどうでもいいんですけど、ネタとしてのぼっち自虐とバンドものという組み合わせが面白いのは強いんですよ。バンドっていわば団体競技で、マジモンの陰キャはまず組む時点でつまずくという前提があり、それゆえに意外性がある。

 ただ、この漫画の場合は、ただ奇をてらってつけられたぼっちネタではないと思います。

「私は青春コンプレックスを刺激しない歌ならなんでも…」
「逆に青春時代のうっぷんを歌詞にたたきつけてるバンドは好きだなぁ…」
「ロックとは負け犬が歌うから心に響くのであって成功者が歌えばそれはもうロックとは言わな…」(3話)

 これは冗談交じりのギャグシーンですが、主人公の後藤ひとりは、人前に立ち歓声を浴びる華やかな「バンド」に憧れを抱きつつも、人の輪にうまく入れない不器用な自分を慰めるものとして「ロック」を定義しています。
 同じ女子高生バンドものである『けいおん!』と最も異なる部分はここでしょう。
 孤独な人間が歌うからこそロック、という思想がベースになっている点で、むしろ『ロッキンユー!!!』と共通項を見出せるのではないかな、と個人的には思っています。

「ロックなんかやってる奴 キモいに決まってるだろ!!!!」(『ロッキンユー!!!!』1話)

 これ、源流をたどると90年代グランジとかに起因するんですかね。浅学にしてよくわかりませんが、おそらく『ロッキンユー!!!!』も『ぼっち・ざ・ろっく!』も、「ロックは華やかではなく、孤独で、多数からの理解を拒むもの」という観念を得た元は90~ゼロ~10年代邦ロックなのではないかな、と思っています。ナンバーガールなりアジカンなりクリープハイプなり(そういえば両作品ともにフジファブリックのネタが出てきますね)。

 そう考えると、ひとりのぼっち属性は決して脈絡なく面白半分でつけられたものではなく、ロックに対するこの世代の受け取り方が反映されたものであり、そういう文脈のもとにテーマが形成された漫画であるといえるのではないでしょうか。つまり、ぼっちネタは必然なのではないか、と私は思います。そこが面白いし共感を得られるのではないでしょうか。
 引き合いに出した『ロッキンユー!!!!』も、『ぼっち・ざ・ろっく!』も、ターゲッティングもジャンルも絵柄も手法も全く違うものでありながら、「孤独なロック愛好家がバンドを通して人との連帯を知っていく」という過程はおそらく似ているのではないでしょうか。そしてその「孤独だけどそれでも繋がりを希求する」というテーマに、我々の世代はロックを感じるのではないでしょうか。

「繋がらない だけどいつかは繋がりたい そんな心で」(『真冬のダンス』ASIAN KUNG-FU GENERATION

☆繰り出される邦ロックネタ


 真面目な話沢山したし、もういいですよね?
 私はアジアンカンフージェネレーションのオタクなのですが、実はこの漫画に興味を持ったきっかけが「登場人物の名前がアジカンのメンバーから取られた美少女バンド四コマ漫画がある」という情報を目にしたことがきっかけでした。どういうきっかけだよ。オタクなので……。
 主人公である後藤ひとり、また「結束バンド」のバンドメンバーである伊地知虹夏、山田リョウ、喜多(下の名前気になりますよね)という登場人物、苗字が全員アジカンのメンバー(後藤正文喜多建介山田貴洋伊地知潔)由来です。
 この時点でアジカンファンの夏の課題図書と化しているのですが、虹夏とリョウは元ネタの方々とパートも同じ。ひとりと喜多はどっちがギタボに回るのか不明ですが(このままいくと当初ギタボ予定だった喜多がボーカルに収まりそうですが、元ネタも鑑みて何かひと悶着ありそうですよね)(喜多建介も結成当初ギタボ志望だったことがあり……)、ギター隊であるところは同じ。あと、「無口でクールなベーシスト」「コミュ強で明るいドラマー」「顔がいいけど天然ぽんこつなギター」ってアジカンなんだよな……。ひとりに関しても、元ネタのお方と正反対に見えて彼もやたらとぼっち自虐をやっているわけで、むっちゃにやけるんですよね。
 たぶん名前をとってるだけでキャラの内面まで似せてはいないと思うのですが、ファンなら無限に深読みが出来て楽しいところです。『けいおん!』で平沢親子ネタやってた感じの層に刺さりそうなアレがありますね……。

 他にもめっちゃ細かいところでゼロ~10年代邦ロックネタがふんだんに盛り込まれており、1話1ページ目から見覚えのあるCDジャケットが並んでいたり(『クロニクル』あるやないか~い)、その後もちょくちょく見覚えのあるバンドのネタが挟まれます。
 パロディネタだとなんといっても毎話扉絵の各アーティストPVパロが白眉。2話のアジカン『リライト』から始まり、KANA-BOON『盛者必衰の理、お断り』フレデリック『オドループ』クリープハイプ『イト』とアッあれコレ見たことあるコレ……というラインナップがバンバン出てきます。今のところ毎回アーティスト変わってるので、どういう方面に行くのかめっちゃ気になるところですね……。


☆話がおもしろい


 漫画としては超当たり前なんですけど当たり前だからこそ書いてしまった。
 連載四コマという取れる尺の少ない媒体でありながら、毎回ちゃんと話が進んでいっており、ひとりが少しずつ成長しているの、すごないですか……? 一人で孤独にギター弾いてネットの世界でイキるしかなかったひとりが結束バンドに拾われてある種救われ、そんな彼女が今度はギターを諦めようとした喜多に意を決して手を差し伸べるの、めちゃくちゃ尊いんだよな……。てぇてぇなぁ……。
 前述の「孤独だけど連帯を求める」テーマの話に繋がるんですけど、ちゃんとひとりの成長、あるいは変化(本質が変わらないまま前へと進む)という軸がしっかりしている漫画なので、安心して読めるかつ次回が気になる漫画でもあるんですよね。読み始めてから一か月が長すぎる。
 伏線の張り方もうまいです。最初に出てきた逃げ出したギタリスト=喜多ってわかるところとか。この尺で過不足なく物語を詰めてるの本当にうまい。歴戦の猛者か???


☆絵柄・キャラがかわいい


 この系列の漫画ではおそらくかなり重要な要素だと思いますが、かわいいです
 繊細な線画にまるっこくて下がり眉のかわいいキャラクター、色合い鮮やかで淡めの塗りがまた良く、内容とのギャップも合わせて魅力的。また、下北某所を元ネタとしたライブハウスの内装もディテールが細かかったり、楽器絵も精密、恐らくは実際に楽器触ってる人も納得の作画なんじゃないかなぁ。作者さんはベーシストらしいのでその辺にも信頼がおけますね。
 あとキャラがかわいいです。キャラ付けも四人それぞれ立っていて、バランスよく描き分けられています。特に喜多ちゃんがかわいい。喜多ちゃんほんとかわいい。まずは喜多ちゃんをじっくり見てほしい。




 あまりにも顔が良い。顔が良い……顔の良い美少女は人類の至宝……
 公式美少女だし顔が良い時点で114514364364510点なんですけど、喜多ちゃんは内面も魅力的で、コミュ障拗らせてどもるひとりにヒューマンビートボックスで返したり、ひとりを探してゴミ箱覗いたりする天然さも超かわいい。なにより先輩に憧れてバンドに加入するものギターが弾けないことを隠していたため逃げ出しちゃうし、逃げたことを悔いてバンドをやる資格なんてないとまで思っちゃうのかわいいし、必死にギター練習してたってのもあまりにも健気でかわいい。リョウさん好きを拗らせてヤバ発言しちゃうところもかわいい(元ネタの二人が第一印象最悪だったことを思い出すとアのオタクはより楽しいと思います)。 はまじ先生がツイッターにアップしていらっしゃったこの喜多ちゃんメイド服イラストさ~あれさ~もうこの世の救済でしょ。エンジェル喜多ちゃんガチ推し、略してAKGだ。
 ハイスペックぽんこつ美少女が好き好きオタク、悪いことは言わない、いますぐ『ぼっち・ざ・ろっく!』を読んでくれ。ついでにAKGのほうの喜多さんにも連鎖的に沼ってくれ。美少女好きオタクが41歳のおじさんに沼ったらおもしろいしその逆もおもしろいので……(行動原理がおもしろさしかない)。

 いろいろ妄言を連ねてきましたが、前述の通りまだ単行本の出ていない段階の漫画であり、本誌を読んでくれという他ありません。でもいきなり本誌はハードル高いよね。わかる。
 そんな皆さんのために、試し読み公開してるので、URL貼っておきますね! ググって出てこない試し読みってなんなんだよ。アジカンの公式並にガバガバだな。
 惜しむらくは無料公開分だとまだ喜多ちゃんが出てくるところまできてないんですよね、ハイスペックぽんこつ美少女好き好きオタクと「私の推し(の名前)が美少女に!?」ってなってる建さんクラスタは諦めて本誌買ってください。きららMAXはワンコインで買える!

(後日追記)ニコニコ静画のほうでも掲載始まってます。こっちは随時更新なので三話以降も載るのかな……? 喜多ちゃんが見れるかも……! ところで喜多さん禁酒頑張って欲しいですね

 そんなこんなで興味を持っていただけたら幸いです。あとアジカン好きでぼっちざろっく読んでる人は早めにリプライください。クソオタク話がしたいので……。


 絶対に横浜の喜多さんに下北の喜多ちゃんを認知させような!