幻想俯瞰飛行

生存記録を兼ねて長文を書くためのブログ。文章読んだり書いたりします。 

11/26 ASIAN KUNG-FU GENERATION 映像作品集13巻~Tour 2016 – 2017 「20th Anniversary Live」 at 日本武道館~ 先行上映会


ASIAN KUNG-FU GENERATION 映像作品集13巻 ~Tour 2016 – 2017 「20th Anniversary Live」 at 日本武道館~ (Trailer)


 当たったので都内某所行ってきました。抽選で25組50名の中に潜り込めました。神音響だった。
 DVD出てからじっくり観て感想書けばいいじゃんって話なんですが、先行上映会の目的って、行った人に口コミで評判広めてもらって購買意欲を煽るためだと思うので、その思惑に加担したくて筆を執りました。

 いや~~~もうマジでアジカンファンが買ったほうがいいです。当日のライブ自体が最高だったということもあるし、撮り方もちゃんと撮ってほしい・観たいところをばっちり映してくれてたので、素晴らしいDVDになると思う。
 ていうかマジで20周年ライブのセトリが良さすぎるんです。三時間のボリュームですよ。ソルファ全曲再現ですよ。昔のアジカンのほうが好きー! 今はわかんなーい! って人もいるし、最近追いかけ始めたんですよねー、という人もいるだろうし、いやいや全部好きですパターンもあるし(自分です)、それは様々なんだろうけど、たぶんどんな立場のファンの方も納得できます。この内容。MCで後藤さんが「最近の曲より昔の曲が盛り上がっても別に怒らないからね(笑)」的なことをおっしゃっていましたが、マジでどこのアジカンが好きなどの世代のファンでも受け入れる懐の広いライブだったように思う。
 記事書いたように、自分は武道館一日目に行ったんですけど、こうして二日目観てみると甲乙つけがたいですね。ただ、映像にするならこっちだなーとは思った。MCの内容とかも20年の総括になっていたなぁと。でも一日目もよかったですよ! 夜のコール! 転がる岩弾き語り! 喜多さんコーナーの八景はむっちゃ羨ましい(でも嘘ワンも最高だったよ)!

 買おうね



 以下はしょうもない曲ごとの感想です。DVDの感想というより思い出語りだこれ。

遥か彼方
 紗幕に包まれたキューブ状のセットがドドン。今回のライブはこのセットを中心として光や映像の演出がふんだんに用いられており、視覚にも楽しいステージでした。山田さんにスポットが当たり、お決まりのベースのベンベベベベベベ……から始まりグワーッと会場を引き込む。
 この曲、インディーズ初&メジャー初(再発なので両方ですね)の『崩壊アンプリファー』の一曲目を飾る曲であり、歌詞もストレートに「なんかもういろいろあるけどこれから突っ走っていくぜ俺たち!」的な色彩の強いものなんですけど、それをこう、20周年記念ツアーの一曲目に持ってくるの、最高すぎますよね。エモの意味かよ。曲自体が全く異なる決意の歌に聴こえるから、年月ってすげえなって思います。

センスレス
 「キミガココニツクナリハイタタメイキ……」の『the start of a new season』リバイバル文字列。ライブレポでも書いたけど本当に本当に本当に激アツ。このツアーは結構過去のツアーや作品を思わせる演出が多く、そういうの普通に涙腺に来るからやめてくださいって感じです。
 プログレチックにバンバン展開を続けて最後に爆発する名曲ですが、ラスサビで後ろのスクリーンが白く光って会場が徐々に照らされていく演出が、まさしく「闇に灯を」で最高。
 細かすぎて伝わらない後藤さんの好きな歌い方その一:「おんそーくのスピードで文字によっおっお↑~おお~う」

アンダースタンド
 ライブアンセム。こんな昔の曲が未だにこうして盛り上がるのすごい。曲に併せて手拍子する大勢の観客が映されるとそのあたたかいフィーリングに涙腺が緩む。
 「歪んだ日~の君~を、ウォウ、ウォウ、捨てな~いでよ~、イェー!!(観客叫ぶ)」で紗幕落とす演出を最初に考えた人にノーベル平和賞授与したい。センスレスもそうですが、「闇の向こうに光を見る」アジカンの曲のスタンスを舞台演出がよく理解しすぎている。

暗号のワルツ
 は? マジ? 二日目暗号のワルツやったんか? マジで? 『ファンクラブ』期のあの繊細できらめいていて切ないギターから始まる変拍子ソングは猛烈に美しい。あとキーボードのピアノ音色がすっごい映えてましたこの曲。こういうガチンコギターロックバンドのサポートメンバーって賛否両論になりがちだと思うんだけど、アジカンはかなり良いように作用してるんじゃないかなー(曲にもよるけど自分はおおむね賛成派です)。
 それにしても、『ファンクラブ』、「君に伝うかな 君に伝う訳はないよな」で始まるアルバムって相当に壮絶だ。伝わらない、でも伝えたい、そのアンビバレントとずっと取っ組み合いを続けてきたバンドであることの象徴ですよ。これを武道館で歌うんですよ。この話は曲で喩えると大サビなので何度でも言います。何度でも暗号のワルツがすごいと歌え。

ブラックアウト
 一つのリフを少しずつ形を変えながら最後まで引っ張るアジカンの曲構成を、「最後に伏線回収するミステリみたい」と言われたことがありまして、この曲は典型的なそれだと思います。何も考えなくても身体が揺れるダンサブルなロックなんですけど、そういうところも面白くて、何度聴いても飽きない。あとライブでのコーラスがすごい綺麗ですよねぇラストとか。
 歌詞、「今 灯火が此処で静かに消えるから 君が確かめて」って、消える灯火は命ですよね。命の終わりをちゃんと見届けろってことだよね。『マジックディスク』期における「いつか終わる生命」というテーマのさきがけがここに見てとれます。まあ、この曲のテーマはどっちかっていうと『ファンクラブ』期の「デジタル―身体性」の部分だと思うんだけど。センスレスとかも。
 細かすぎて伝わらない後藤さんの好きな歌い方その二:「ただ~たっち~つっく~す~ぼっくの~よ~わ~さ~とぉ」(音源だと「ぼっくっの~」なのがちょっとずらして歌ってるやつです)(あと、ラスサビのここの「僕の」のところのベースが半音ずつ上がるやつめっちゃ好きなんですけど、これ音楽用語で何て言うんだっけ???)

君という花
 元祖四つ打ちダンスロックは本当にいつ聴いても無敵すぎるし、こともなげに曲に入っていくところめっちゃカッコいいですよね。君という花の入りはその時々によって様々なパターンがありますが、今回は大人の余裕を感じます。この曲で踊る観客たち観てるの楽しい~~~。PV懐かしい~~~。武道館を一杯にする「ラッセー!ラッセー!」も感慨深い。
 初期アジカンは特に「技術的に出来ることが少ないからこその創意工夫」がめちゃくちゃ曲に見て取れると思うし、この曲もそうだと思う。難しいことをやらなくてもカッコいい。それはすごいことだ。

粉雪
 自主制作時代から存在した曲であり、アジカンの初日本語詞。そんな曲を「懐かしい曲やりま~す」ってやり始めるのマジで反則なのでやめてください。嘘。やってください。
 『崩壊』期特有のなんかよくわかんないけどすごい過去を悔やんでることがわかる歌詞炸裂。ライブでの喜多さんのコーラスも良き。アジカン、もっと疑似ツインボーカル的な曲出してくれ~! 昨今のキタケンボーカルムーブメントの流れでどうか一曲! 『ナイトダイビング』とかさあ、自主制作だけど『Nothing is the matter?』とかさあ。
 20周年の文脈で聴くとまた違った感慨がある曲ですね。背景で延々雪降ってておもしろい。

マーチングバンド
 それでも僕らは息をしよう――『マジックディスク』期のテーマを総括しながらもわかりやすい言葉でかみ砕いた傑作シングル。ベスト以外のアルバム入ってないのがもったいなさすぎる。
 セッション的な流れからじわーっと始まっていくのが壮大なこの曲にぴったりマッチしている気がします。中期(?)アジカンの軌跡、という感覚の曲だなぁ。ラストのコーラスなんて歌ってるのか未だにわかんねぇ。

踵で愛を打ち鳴らせ
 マーチングバンドに続いてハッピーでピースフルなフィーリング(カタカナ多いな……)の流れ。『ランドマーク』の目指すところはここに帰結してるんだろうなと思う。キャリアの中では比較的新しめの曲ですが、お客さんたちがちゃんとノっているところにアジカンのマジックを感じる。

今を生きて
 そのハッピーな流れがここに繋がるんだよな。作曲クレジット四人の曲で感慨深いよね。イェー!の歓声が楽しい。下村さんの八面六臂の活躍も見れるぞ。
 前述のマジディのテーマ、ここにも脈々と流れているように思います。「数十年で消える弱い愛の魔法」だから「今を生きて」噛み締めるしかないんですよね。ライブは一夜の輝き。生命も一瞬の輝き。そこに符合があるから、人々はライブに向かうのだと思います。多分。

E
 オアシスの映画の話からEに繋げるの卑怯ですよほんともう。意図的すぎるセットリストだろう。『リヴ・フォーエヴァー』のソロを難なく弾き倒す喜多さんのギタリストとしての大成っぷりに涙が出ますよ……
 これもまた、『遥か彼方』と同様に自分たちの門出を歌ったものだと思うんですけど、やっぱり今やると全然文脈が違って聴こえますね。20周年を迎えたうえでの「ここから僕のスタート」ですよ。「広がりゆく未来へ」。「できる限り可能な限り遠くまで」。
 音楽文.comに掲載して頂いた文章でも語り倒しましたが、この20年でアジカンの背負うものは随分大きくなって、それが時に重荷にもなったと思うんだけど、それすら背負って歩いていく気概を今のアジカンには感じるんですよ。アジカンという呪いすら飲み込む胆力。この四人が集まると変なパワーが生まれる、それは素敵なことだ、と後藤さんはMCで言っていたけど、それをこの曲の「語り直し」で感じた。

スタンダード
 で、『E』の次にこれ持ってきたのも意図的でしょ? だってこれ、俺たちはこれからも歌い続ける、喩え周りに忘れ去られても、って曲じゃないですか。これから先、アジカンがどんな形態になっても、どんな場所でも、それでも歌い続けるよってことを、『E』のテーマの延長線上で言いたいわけじゃないですか。ハァーーー……そんなん言われたら一生ついていくわ。20周年のライブでそういうことやるのがアジカン……ホント好き……。 

ブラッドサーキュレーター
 それでさ~その流れで「情熱燃やしたあの頃を心血注いで取り戻すんだ」ですよ。これアニメタイアップ曲だけど、やっぱ自己言及的な色彩が強いよね(そもそもかの『リライト』だってタイアップだけど内容はCCCDへの皮肉ですし)。この流れはほんとよく考えられてるなーと思います。

月光
 ライブレポでも言ったけど何度でも言わせてくれ、月光終わりは本当に卑怯。静謐なピアノから始まり、月の光を思わせる照明、轟音で鳴くギターと泣き叫ぶような歌、そして響き渡る音の残滓を残して去っていくメンバー……。救いのない歌なんだけど、それでも切ないまでに美しいね、何回聴いても。
 アー写のロン毛で笑いが起きるとこ何度見ても草生える。

振動覚
 ハイパーソルファ全曲再現タイムの二部スタート。奇しくもこれも自己言及的な歌詞。ヒットアルバムの一曲目で「特別な才能を何一つ持たずとも」って歌ってしまうところもすごい(これは別に凡才という意味ではないとは思いますが)。なんで一曲目にすごい歌詞多いんだアジカンは。

リライト
 このブログでも記事書いたし先日のアシッドマンフェスでも思ったんだけど、我々の世代では殆どの人間が知っているヒットソングで、まあアジカンのライブに来る人で知らない人はいないだろうなってアンセムで、同時に作者の手を最も離れて羽ばたいた曲でもあると思う。それに対しては多分複雑な部分もあったと思うし、それこそ君に伝うわけはないよな~あ~ああ~みたいな心地にもなったと思うんだけど、それもまた音楽みたいな境地に達した感はありませんか。ないか。リライト以外も聴いてくれとか言ってるもんな。
 アジカンファンだと好きって言いにくい雰囲気ある曲だけど、でもやっぱりアジカンの象徴ではありますよ。アジカン特有のコーラスワークもないしブリッジでがらっと曲調変わるところは独特だしPVでは宙に浮いたり水に沈んだりしますけど、それでもなんかこう、曲の魂がアジカンを表現している曲じゃないかなぁ。前述のようなリフ推し曲でもあるし。
 今回の間奏アレンジは新録『ソルファ』同様、ギターがセクシーでエロい感じ。空間系エフェクターっていうんですかね、楽器のことはよくわかんないけど、あの色気と余韻ある響きかっこいいよね。「芽生えてた感情~」のコールアンドレスポンスも武道館だと圧巻。

ループ&ループ
 「『君と僕で絡まって繋ぐ未来』『積み上げる弱い魔法』をうたうこの曲で過去の歴史を振り返るの最高すぎませんか」というライブレポの文面を再度引用させてください。バックに表示される歴代CDジャケットたちがマジで涙腺を直接攻撃してくる。これもまたライブアンセムな曲ですよね。

君の街まで
 この順番に慣れない。冒頭のアルペジオからかつてのアジカンより遥かに基礎体力が向上してしっかりした演奏になってる感がしますよね。今回は全部通して喜多さんがすっごい安定してるなーと思う。ラスサビ前のクラップで会場が一つになる感、それを見ての後藤さんの笑顔、とても素敵です。これも自己言及的な曲なのかなぁ。

マイワールド
 なかなか生で聴く機会のない曲ですが大きい会場が映えますね。この辺の『ソルファ』の曲はかなり自己言及の側面が強い気がします。彼らが「一度だけ最後まで乗れた低く白い波」はどこまで行くんでしょうね。あ、これ『八景』に繋がらないか……? 「白波を分け行く未来」に……

夜の向こう
 この後の不穏な曲たちの片鱗をちょっと感じさせつつも、美メロとラスサビにかけての盛り上がりが映える。この辺の曲はお客さんみんな聞き入ってる感じがして、聴かせることもできるバンドなんやな~という感じ。アルバム曲だしね。

ラストシーン
 照明めっちゃくちゃかっこいい……。ギターの紡ぐ音に合わせて光が走るのむっちゃかっこいい……。ふわふわしていて悪い白昼夢みたいで、不思議な曲ですよね。この曲のコーラスもいいよなあ。アウトセーフマグワイア(懐かしいネタだな……)。

サイレン
 ドラムーーー! 潔さんがむっちゃかっこいい曲です! 音に合わせて投げかけられる光とか赤い照明とかむっちゃかっこいいよな。でもあの映像はなんなんだろうな。いい意味で今のアジカンは作らなさそうな曲なので、今のアジカンで観れるの楽しい。

Re:Re:
 マジで新録のアレンジがライブ定番のアレでクソほどかっこよくて、新録『ソルファ』買った一因となった曲なんですけど、ぶっとい安定感のベースから始まり徐々にバンドのアンサンブルが形成されていく感じかっこいいですよね。この曲のギターも色気があって好き。
 ドキュメンタリー本見たら最後の一音外したって書いてあったけどそうだっけ……(うろ覚え)
 
24時
 後藤さんの「かっこよく歳を取りたい」、つまり菩提樹荘の殺人なんだよな。(ミステリの話を挟まないと死ぬオタク)
 「妙な縁で添う君や僕たち」とはまさしく我々とアジカンのことだと思うんですけど、そう思うとこの縁がよくぞここまで……という気持ちになります。しかしこの歌詞は傑作だなぁ。

真夜中と真昼の夢
 一日目は盛大にトチってたんですけどこの日は大丈夫そうで安心しました。やさしくやわからなギターの音色が美しい。これも「僕」がアジカン、「君」が聴き手となる歌詞ですよね。そう思うとソルファって本当に「歌うこと」の歌が多いんだな。アジカンらしいといえるのか。

海岸通り
 はい! 涙腺崩壊! NAOTOさんのストリングスチームを加えての演奏が抜群に最高。『海岸通り』にストリングスは鬼に金棒ですよ。マジで『Whatever』みたいな壮大な名曲になる。
 ツイッターで「海岸通りの「『陽で朱に染まる……』という歌詞に併せて照明が朱色一色になるんですよ……そして曲が終わると白に変わってメンバーが捌けていくの……エモの意味かよ…………」って言ってたのをそのまま言いたいです。アジカンにはいつもエモの意味を教えられまくっているな。
 細かすぎて伝わらないんですけど、アウトロのストリングスの「テーレ↓レー、テレレーレーレー、テーレ↑レー、テレレーレレーレレー」のこの部分のハーモニーめちゃくちゃめちゃくちゃに好き。

ソラニン
 アンコ一曲目。後藤弾き語りタイム。立つなり座るなりトイレ行くなり帰るなり……
 中津川ソーラー行ってキタケンバージョン聴いたときに思ったんですけど、この曲って曲としての強度が他のアジカン曲に較べても断然強くて、歌詞を誰が書こうがどんな楽器で演奏しようがどんな声で誰が歌おうが、圧倒的な曲の力を発揮できる歌だと思います。そういう強度でいえば『リライト』よりも上に感じるくらい。だから弾き語りでギター一本でもすごい映えるんだよね。さよならを告げる曲なのに切ないだけじゃなくてそこから立ち上がる力強さもある。あと漫画『ソラニン』新装版読んだばっかなので沁み具合もちょっと上がりました。

ワンダーフューチャー
 弾き語り二曲目。武道館一日目、あまりワンダーフューチャー聴き込んでないときに生で聴いてすごい衝撃を受けたんですけど、この曲のもつ寂寥感というか、戻れないところまで来てしまったなぁという感じがひしひしと伝わってきてヤバいです。未来に対する希望ともう戻れない諦観の混じり合った絶妙な心境を表現している不思議な作品だよなぁ。

タイムトラベラー
 キタケンコーナー一曲目。歌めっちゃ巧なってない? あとギターソロが地味に渋くてイカす。
 『シーサイドスリーピング』が喜多さんイメージ、『八景』がアジカンイメージだと考えると、この曲も実は自己言及的というか内輪ネタ(?)というか、自分たちのことを指しているのかな、と思います。この曲、冒頭から「タイムトラベラー」が体験したことが綴られて、その後にそこが作中作というか、「君」が綴る物語であることがわかる二重構造なんですね。「君」は絵空事を綴り、それを語り、願いを託し、それを「僕」が歌う。これ、そのまま後藤さんが歌詞を書いて喜多さんが歌うこの曲自身の構造に重なるなぁ、と思っていて、そういう意味だったらちょっと感慨深いなぁと。

八景
 あの、『八景』大好きなんですけど。二十周年を思わせる歌詞を表題作ではなくカップリングに仕込むこと、そのタイトルを四人が学生時代を過ごした場所から取ること、そしてそういう曲を自分で歌わず他の人に歌わせること、全部後藤正文らしすぎるというかアジカンらしすぎるぞ。
 「誰かの不意なジョークで僕らはまた息を吹き返す」「波のない海じゃなんだか味気ないようなそんな気持ちになるでしょう」本当にアジカンにぴったりのフレーズすぎて様々な歴史が喚起されるし、ときに波立てながらもちゃんと心から音楽に向き合ってきた彼らの軌跡を思うともう……。
 そして20周年ツアーならやっぱこの曲でしょ、ということで、生で聴けた人本当に羨ましいです。コーラスワークとギターのハーモニーが素敵ですよねぇ。テンポの変化も楽しい。

さよならロストジェネレイション
 ストリングスチーム再び。ほんと、ここからの二曲だけで記事書けるやんというくらいラスト二曲が素晴らしいんだよな。
 バックスクリーンのタイポグラフィ演出もかっこいいし、かっこいいだけじゃなくて、この曲は「閉塞した時代で、いつまでも自意識の檻に籠ってる場合じゃねぇ、新しい道を歩もうや」みたいな意味合いがあるので、これからまた新たに歴史を重ねていくアジカンに相応しい曲でもあるんですよね。イントロのあのフレーズを優美にストリングスが奏でる時点でもーーー涙腺!!!

新世紀のラブソング
 は? 神か? 完結編か?
 「始まれ21st」とバンドの21周年目を重ねるの天才の所業か?
 イントロのブレイクビーツでもう空気ががらっと変わるし、音源の逆回転ギターがライブだとあんま再現されなくて結構悲しかったりするんだけどそのフレーズをストリングスがやっててまた全然違う響きになっててすっごいかっこよくて、そうやって厳かに始まった曲に後藤さんの個人的な告解を語るような歌声が乗っかってきて、青春の挫折が語られて、そこから地続きで君や死や世界に話が進んで、それでも世界は続いていくってことが歌われてさあーーー。もうこの曲好きすぎて何も語れねえ。語彙力が幼稚園児だから。
 これ、祝福の歌なんですよね。哀しみに満ちた旧世紀を今からでも過去のことにして、新しい時代を始めようっていう。これが震災の二年前の2009年に出たのは本当に皮肉な話ですが、でも今からだって遅くはないんだよって話ですよね。アジカンはいつでも来たる新世紀に希望を見出してるんだよ。
 ストリングスが入ると、マジでこの世界を祝福しているようで、またはじまる明日を、何度でも生まれ来る新世紀を言祝ぐ歌なんだなっていうのが実感をもって肌に迫る。で、祝福は愛ですよね。祈りは愛ですよね。だからラブソングなんだよね。生まれくるものを祝う歌なんだよな。君の涙は生まれるものの涙。いくらでもクソポエムが書けるぞこの曲。
 あと、トレーラーの時から話題になってた(というか自分が話題にしてしまった……?)話なんですけど、「不確かな想いを愛と呼んだんだ」のところの喜多さんの目許に光るものがあるというアレ。汗なのか涙なのかは本人のみぞ知るところですが(しかしカメラはどう考えても意図的に涙に見せようとはしてると思う)(カメラマンってすげえな)、「ほら君の涙」って歌詞の前にこれ持ってくるのマジですごいっすね。喜多さんもカメラマンの方も持ちすぎだろう。
 この曲をラストに持ってくることを考えたの誰か知りませんけど、偏差値3000000000000億ある。


 以上とても頭の悪い感想で申し訳ございませんでした。MCの話とかも全然してないので、その辺は別の人に聞いてください(丸投げ)。
 映像作品集13巻、絶対に買ってくれよな。自分は予約済みです。