幻想俯瞰飛行

生存記録を兼ねて長文を書くためのブログ。文章読んだり書いたりします。 

アジカン聖地巡礼部 シーサイドスリーピング編


オタクはなぜ聖地巡礼をするのでしょうか。

 というかオタクに限らず、ドラマやバラエティのロケ地巡りとかもあるわけで、なんか知りませんけど人間には「あの作品の舞台となった場所/好きなものに関わる場所に行ってみたい」という欲求が存在するようです。宇野常寛が「拡張現実的想像力がなんたら」みたいな話をしていた気がしますが、己の立つ現実を想像力で塗り替えるような力があるのかな、とは思います。
 でもまあ聖地巡礼の動機は人それぞれで、アングルがぴったり合致する写真撮って悦に浸りたいとか、推しと同じ場所に立ってキャーキャー言いたいとか、単純に絵面が好きだから生で見てみたいとか、いろいろあるんじゃないでしょうか。
 でも私には一つ言えることがある。なぜ聖地巡礼をするのか。そこに聖地があるからだ。


 というわけで、アジカン関連の聖地巡りの話をしようと思います。このブログ、本来なら硬派な話題オンリーにしたかったんだけど、書いてる人間がいかんせん軟派すぎるので年々軟派になってますね。硬軟取り揃えた楽しいブログにしていきたいです(適当)。


 ゴールデンウィークだ! しかも所用で前日横浜泊まりだ! 今日はフリーだ! 聖地巡礼の機運だ!
 今回訪れたのは、アジカンの隠れた名曲「シーサイドスリーピング」の舞台となったと思われる金沢八景周辺。シーサイド~といえば喜多建介ファンの聖歌(ほんまか?)である喜多ヴォーカル曲であり、軽快なリフとありえん喜多みの強い歌詞(いや作詞は後藤さんだけどむっちゃ喜多さんソングじゃん……)が一部のファンに爆発的人気を博している名曲です。

 アジカンの歌詞には地名の固有名詞があまりないことは割と皆さん気付いていらっしゃると思いますが(サーフ~は例外として)、シーサイド~の歌詞にも具体的な地名は出てきません。ですが、金沢八景近隣の光景であること(インタでおっしゃってたと聞き及びましたが一次資料にあたってないので適当です……)、そこから歌詞中の「モノレール」(シーサイドライン)「賑やかな遊園地」(八景島シーパラダイス)から明らかにシーサイドライン沿線であることがわかります。
 で、このあたりで「運河沿いの公園」といったらまず野島公園でしょう。シーパラも望めるし。
 「シーサイドスリーピングの舞台野島公園説」はあまり見ないし、聖地巡礼している人ももしかしていないかな? という感じ(先人の方がいらっしゃったら申し訳ない、是非お写真見せてください……)。ロケ地だけでなく作品の舞台を訪れるのも大好きなもので、ここは行きたいな八景も近いし、と思い、足を運ぶことにしました。GWだしね。


 10時に出発、京急某駅から金沢八景へ。
f:id:h_shibayama:20180501190113j:plainf:id:h_shibayama:20180501190058j:plain

 アジカン結成の場所、関東学院大学の最寄り駅であり、アジカンファンの聖地。二十周年を祝ったファンならやはりここでアニバーサリーな歌詞の「八景」を聴きたい。彼らの歩みをエモエモに描いた八景の歌詞最高。そういえばこれも喜多ヴォーカル曲ですね。
 金沢八景駅シーサイドラインの延伸工事をやってる最中なので、90年代後半そのままの景色を味わうことはできませんが、聖地巡礼をやるファンなら真っ先に寄っておきたいところですね。
 駅前の交差点を渡り、シーサイドライン乗り口へ。ここと京急が繋がるなら便利っちゃ便利だけど、工事いつ終わるんだろーなー。
f:id:h_shibayama:20180501190849j:plain

 シーサイドライン金沢八景駅からの眺め。すでに良さみが深い。海のある県はいいな……


 最寄駅である野島公園駅までは一駅で着きます。歌詞に出てくる「運河」、野島運河を渡り公園のほうへ。暑い上にGWだけあって人が多い。
f:id:h_shibayama:20180501191513j:plain

 写真が下手すぎて設定弄ったら真っ白になってしまった。


 歌詞の話に戻ります。
「運河沿いの公園で煙草ふかして」の一節から野島公園ではないかとわかったわけですが、それでは具体的にこの曲の主人公はどこにいたのでしょうか。
 作詞の際にロケハンしてるかはわからない、というか多分してない(後藤さんの八景の思い出で書いたんじゃないかなあ)と思うんですが、あくまで受け手のイメージとして「この辺かな~」と妄想するために、それっぽい場所を探してみることにします。折角なので。


 まずひとつめのヒントは「賑やかな遊園地では人々が鈴生りになって笑う」。この短文で「日曜日の平和な昼間」を演出してみせる技巧が光りますが、着目すべきは「この主人公は、遊園地(シーパラ)が見える場所にいる」と解釈可能、ということです。もちろん断言はできませんが、歌詞の光景を想像したとき、ぼんやり遊園地を眺めながらビール飲んで煙草喫ってる主人公が思い浮かぶので、聖地巡礼勢としては採用していきたいところ。
 海越しにシーパラが見えるのは野島公園の北東の部分。公園の中央だとおそらく木々が邪魔して見えないので、端っこの海沿いの場所になるのではないでしょうか。
 とあたりをつけ、その辺で見えそうな場所を探してみます。
f:id:h_shibayama:20180501192819j:plainf:id:h_shibayama:20180501192827j:plain

 ありますねー!
 時節柄家族連れが多く、海岸では潮干狩りをする人々がたくさん。ピクニックに来ている人も多い。そんな中オタクは独りでオタク聖地巡礼をしているわけですが……。
 シーパラも見えますし、ここでも良さそうとは思います。

 ですが、もうひとつ思い当たる場所があり。
 それは野島山の上の展望台です。
 野島公園からシーパラを見てもさすがにそこにいる人は見えないので、歌詞で描かれる光景はあくまでイメージであり比喩ですが、それでも「鈴生りになって笑う」人々を眺めるのは、見晴らしのいい場所でも良さそうだな……という感じがします。展望台から見ている可能性もワンチャンあるのでは……?

 そうと決めたら上ります。
f:id:h_shibayama:20180501194043j:plainf:id:h_shibayama:20180501194051j:plainf:id:h_shibayama:20180501194102j:plain

 思ったより長いです。疲れる。
 ipodから大洋航路が流れてきて、なーにがもう漕ぐのかったるいだこっちはもう歩くのかったるいよ! 言う! 女々しいが言う! と思いました。
f:id:h_shibayama:20180501194530j:plain
 猫を発見し大人げなく追いかける2×歳児をしてしまう。


 山頂到着。高所恐怖症なのに頑張って展望台の階段を上る。それにしても変な形の展望台ですね。
f:id:h_shibayama:20180501194857j:plainf:id:h_shibayama:20180501194903j:plainf:id:h_shibayama:20180501194908j:plain

 ウオー! シーパラがよく見えるー! いい景色!(脚ガクガク)
 (おそらく)女の子と喧嘩して自棄を起こして野島公園にやってきた主人公が、さらに自棄を起こしてここまで上ってくる姿を想像するとかなりコミカルでいいですね。人間自棄になったらなんでもする。


 ここでひとつの問題が発生します。
 それは歌詞の「Lie down, down, down, down」「眠り込んでしまいそうだ」の部分。
 眠くなる、そして横になるということは、その前までどこかで座っていた可能性が高いんじゃないか? という懸念がわいてきます(喜多さんなら立ってても寝そうとかそういうのは置いといて……)。煙草を吸う、ビールを飲む、という行為自体は立っててもできるものですが、「煙草を吸い」「ビールを飲み」「横になり」「眠りそうになる」という流れを見ると、ベンチかどこかに座っている可能性が高そうな気がします。芝生の上でもワンチャンありますが、芝生の上にシート敷かないで座って酒飲んで寝転ぶの、割とチャレンジャーっぽいですし……。自棄だからなんでもありかもしれませんけど。

 先程の海際の芝生にも、展望台の上にも、ベンチらしきものはありませんでした。シーパラが見える場所で、ベンチが備え付けられている場所ってないのかな? あったら想像しやすいんだけど……と思いながら野島山を降りると、
f:id:h_shibayama:20180501195943j:plainf:id:h_shibayama:20180501195951j:plainf:id:h_shibayama:20180501195959j:plain

 あった。
f:id:h_shibayama:20180501200118j:plain
 旧伊藤博文金沢別邸の手前にあるスポットです。ベンチがあり、シーパラが見え、モノレールも見え、そのうえ日陰。ロケーション完璧。
 作者の想定にはないとしても、私の中ではイメージに合致するので、ここで決め打ちしようと思いました。
f:id:h_shibayama:20180501200210j:plain
「運河沿いの公演で煙草ふかして 時化た日曜日」(火曜日ですが)(ちなみに火をつけてないし、吸ってません。去年JT主催の講演会でいただいたものが余っていたので小道具に……)
 せっかくなので曲を流しながら歌っていたら、普通に人が来て恥ずかしかった。

 歌詞を読み返しつつ想像を膨らませると味わい深い。
 時系列には諸説あるかなとは思うんですが、私の読みは「夕べの諍い」を経て翌日「君」が主人公を置いてバスに乗って「走り去っ」て(二人でバスに乗れなくて「君」が徒歩で走り去った、とも読めるか? 地面を蹴飛ばしたのが「君」なのか主人公なのかによるな)、「虚しくなってしまったので」(「止め処なく どこへでも漂って」、つまりふらふらして)「運河沿いの公園で」「煙草ふかして」「昼間からビールを呷ってしまう」という感じ。彼女かその一歩手前のような相手を喧嘩で怒らせてしまい、翌日のデートがご破算になり、ひとり取り残された主人公はさびしく公園で無為な時間を過ごす、という解釈なんですが、そうなるとちょっと喧噪から離れた人通りの少ないベンチはイメージに合うよなぁと。

 遊園地の人々はさすがに遠くて見えませんが、公園でもすでに「人々が鈴生りになって笑う」感はむっちゃ出てました。平和なお昼。
 とりあえずむっちゃ喉渇くので飲み物を持ってくるべきだった(自販機は公園内にあるので買おうと思えば買えます)。


 目的を達成し、八景に戻る。
 八景ではいつもベーカリーハウスアオキの二階でごはんを食べるのですが(フレンチトーストがむちゃくちゃ美味なので、八景に来た際は是非!)、今回はクレオールに来ました。八景といえば横浜市立大学関東学院大学の最寄り駅。学生御用達の喫茶店、ときいて、かねてより気になっていたお店です。
 大学によっては今日も講義あるし、学生いたりするかなー、と思ったんですが、地元の方々が中心といった感じ。店内はレトロかつおしゃれな落ち着いた学生街の喫茶店的な趣があり、いいよな~学生街の喫茶店な~と思いました(語彙力幼稚園児)。
f:id:h_shibayama:20180501203240j:plain
 学生街のカフェで食いたいメニューランキング二位くらい(私調べ)のミートソース。甘さ控えめ、玉ねぎ大きめ、汁気多め。おいしかったです。
 アジカンメンバーが来たことあるかは知りません。三十年くらい続いてるっぽいので在学時にはやってたお店だと思いますが、男子大学生ってラーメン屋と飲み屋しか行かないんじゃないんですか?(偏見)

 アオキで家族へのお土産を買って八景を後にしました。
 アオキはいいぞ。八景にお立ち寄りの際は是非。
金沢八景駅前のパン屋さん ベーカリーハウス アオキ Bakery house Aoki



 こんな感じだったわけですが、思ったこととしては「聖地巡礼は理論と実践のフィールドワークやな」と……。今回の場合は作者から明言されていない部分を用いているので想像の部分も大きいですが、手持ちの情報から推測を行い、現場に行き、集めたデータをまとめ、って何の課題だよ、って感じがしますが楽しいですね。疲れましたが面白かったです。
 この日の午後は「ソラニン」MVロケ地巡りもしたので、そっちの記事も書きたい。

 この記事を読んでいる方はアジカンファン、特に喜多さんファンだと思うんですが、アジカンのメンバーの名前を捩った登場人物たちが出てくる(後藤・伊地知・山田・喜多という名前の女子高生が出てきます)「ぼっち・ざ・ろっく!」というバンド漫画の連載が始まりまして、是非是非読んで欲しいので最後に宣伝させてください。人見知りを拗らせた主人公のネガティブっぷりがブラックで楽しい上に楽器・バンド描写がしっかりしているという、ブレイクの予感のする怪作です! 本誌で出てきた喜多さんが特にかわいいです!
 作者のはまじあき先生はロック好きにして筋金入りのアジカンファンなのでめっちゃ信頼できます。読もう。
 まんがタイムきららMAXで連載中です。単行本化はまだですがwebで試し読みできるぞ。君も「元気いっぱいの明るいドラマー」「クールで孤高なベーシスト」というキャラ設定ににやけよう。